基準値きみのキングダム
(10): かがみよかがみでたしかめて
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𓐍
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文化祭が幕を開けた。
色とりどりに飾りつけられた校舎、クラTや衣装をまとった生徒たち、グラウンドの仮設ステージでは有志の人たちによる音楽が鳴り響いている。
そういえば近衛くんたちのバンドもビラを配り歩いていたような。
そんな風に学校全体が浮かれる中、私はもどかしい気持ちでいっぱいだった。
……まだ、深見くんと、話せていない。
前日までクラスの準備でバタバタしていて、そしたら文化祭が始まって、幸か不幸か私たちのクラスの “コスプレ写真館” は大盛況。
慌ただしく1日が過ぎ去って、今日はもう2日目だ。
ファッションショーのリハーサルの日、上林さんと話したことがきっかけで、やっと心を決めた。
コンプレックスを盾にして、逃げるのはもうやめる。
怖くても今度こそ、本当の気持ちを言葉にしたい。
だから、深見くんともう1度話す機会がほしい────……のに、ここ数日はすれ違ってばかりだ。
いざ話そうと思うと、そのタイミングが掴めない。