基準値きみのキングダム
誰かと間違えたりなんか、しない。
磁石みたいに1点に吸い寄せられるのは、深見くんだからだ。
深見くんが、私にとって、とても特別だから。
「……っ」
深見くんも、私の方をまっすぐ見ているような気がした。
そういえば、このファッションショーが終わったら。
グランプリを獲ったら、上林さんは、深見くんにもう1度告白するんだって言ってた。
そしたら、深見くんは、上林さんにどんな顔をして、なんて言うの。
1度は断った相手だとしても、好きだって言われたら、少しは意識するよね。
今度こそは揺らぐかもしれない、相手が上林さんなら尚更。
そうなったら……、いや、だ。
深見くんが他の子を好きっていうのは、いやだ。
想像しただけで、居てもたってもいられなくなる。
そしたら、冷静に考えるよりも先に、口が動いていた。
「────好きです、深見くん」