基準値きみのキングダム
2回目でも、恥ずかしさは変わらない。
でも、ようやく言えた。
あんなにごまかして逃げていたのに、いざ正直になってみると、意外と胸がすっとする。
「杏奈、足出して」
「え……、今?」
このタイミングで?
なんで、と戸惑いながらパンプスを履いている方の足を差し出すと「そっちじゃない」と言われる。
仕方なく、靴が脱げてしまった方の足をおずおずと出すと。
深見くんは、迷いなく跪いた。
そして、拾ってくれたらしい、パンプスの片割れをきゅっと履かせてくれて────前にも、こんなこと、あったような。
いつだっけ、とデジャヴの正体を探ると、ああそうだ。
『森下のことが、気になるから』
あのときだ。
からかわれているんだと思っていたけれど、もしかして、あのときから、深見くんはずっと。