基準値きみのキングダム
その姿が妙に印象的で気づけば目で追っていた。
杏奈のぴんと伸びた背を見ていると、俺の背中もしゃんとする気がするんだ。
「杏奈を見てると」
杏奈を見てるだけでさ。
「あー、俺も頑張ろって、今日も頑張れそうって思う。大袈裟だけど、今日も学校来てよかったって」
無意識に、後ろ首に手をやる。
これが、自分の照れたときの癖だということは、まだ知らない。
「気合いが入るっていうか、癒されるっつうか……、あー、なんか違ぇな。要するに」
じっと俺を見つめてくる杏奈の瞳を見つめ返す。
「ずっと、かわいいって思ってた」
いつから落ちてたのかは、正直、わからない。
だけど、図書室でアンケートを集計する杏奈に声をかけたときから、下心はふつうにあった。
「好きなんだよ、杏奈のことが」
その理由は、単純に。
「世界でいちばんかわいいから」