基準値きみのキングダム
(11): きみが基準のキングダム
♡
𓐍
𓈒
SIDE/ 森下杏奈
思わず、目をまあるく見開いた。
「わ……たし……」
声が、思わず細く揺れる。
だって、私は。
「深見くんが言うほど、かわいくないよ」
「なんで信じてくんねーの?」
「っ、これは、事実だし。私よりもかわいい女の子なんて、そこらじゅうにいっぱいいる……っ」
うつむきかけた私の頬を、深見くんの人差し指がとんとんとつついた。
「つーか、それ関係ある? 俺の世界で一番かわいいんだから、それでいいじゃん」
呼吸が、止まるかと思った。
息を呑んだ私に、深見くんはかすかに笑って。
「俺を、杏奈の基準にしてよ」
そんなことをさらりと言うから、目頭がぐっと熱くなった。