基準値きみのキングダム


𓐍
𓈒



その日の夜は、目を瞑ってもそわそわしてしまって、あまりよく眠れなかった。


眠りが浅かったせいか、りんごのうさぎの大群が追いかけてくる、なんていう奇妙な夢を見てしまった。




「……ん」




ぱちりと覚醒して、それから勢いよくガバッと起き上がる。

寝ぼけ眼でスマホをたぐり寄せた。

ブルーライトがチカチカと眩しい。




ラインを開いて、深見くんの名前を探す。

トーク画面を開いて、文字を打っては消して、迷った挙句 〈おはよう〉 とひとことだけ送った。



深見くんの連絡先は、ずいぶん前に教えてもらっていたけれど、実際に使うのはこれがはじめて。



〈おはよう〉 にすぐに既読がついて、ドキリとする。






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