基準値きみのキングダム
「このあと、10時くらいに集合でいい?」
「うん、駅裏の……銅像のところとかで」
「わかった。じゃあそこで」
待ち合わせの約束をして、ぷつりと電話が切れた。
もう声が聞きたいのは、重症かもしれない。
ふう、と息をつくとポコンと通知の音が響く。
画面を見ると、深見くんから〈またあとで〉と文字が入ったスタンプが届いていた。
リアルでシュールな怖い顔のくまのスタンプに、思わず吹き出してしまう。
こういうスタンプ使うんだ、とか、新しい発見にいちいち嬉しくなるのはもう、自分じゃ止められない。
よし、朝ごはんを食べて準備をしよう、と部屋を出ると、ちょうど起きてきた奈央と鉢合わせた。
「姉ちゃんか。おはよー」
「おはよう。あの、奈央」
「なに?」
「今日、私、出かける用事があるんだけど、早めに帰ってくるから────」
「恭介くん?」