基準値きみのキングダム
私の言葉を途中でぶった切って首を傾げた奈央。
私、そんなこと、ひとことも言ってないのに。
「なんで、知ってるの……」
「姉ちゃんがそういう顔するのは、恭介くんといるときだけ」
「顔!?」
慌てて自分の顔をぺたぺたと触ってみる。
そういう顔って、どういう顔。
慄いていると、奈央がにやっと笑った。
「別に、帰ってくるの遅くなってもいいよ。京香のことは、俺がちゃんと見とくから。せっかくのデート、しっかり楽しんできなよ」
「……っ、デート、って!」
「言っとくけど、姉ちゃん、全部顔に出てるから」
ついに、私は絶句した。
……弟がいろいろと鋭すぎる。
頼りになる反面、末恐ろしい。
「昼ごはんはキッチンに置いてるのをチンして食べてね、鍵はちゃんと閉めておいて、それから万が一なにかあったらすぐに連絡────」
「はいはいわかってるって。ほら、早く行きなよ、恭介くん待ってるんでしょ」
「いってらっしゃーい!」
わかりすぎている奈央と、なにもわかっていない無邪気な京香に見送られて、家を出た。