基準値きみのキングダム
♡
𓐍
𓈒
ほんとうはもっと早く家を出てくるはずだったのだけれど、デートに着ていく服はこれでいいのかとか、やっぱりこっちの方がいいんじゃないか、とか迷いに迷った結果、待ち合わせ場所にたどり着いたのは、約束の5分前だった。
「杏奈、こっち」
その声に顔を上げると、深見くんがひらひらと手を振っている。
もう、着いてたんだ。
「待った?」
「んーん」
ゆるく首を横にふっているけれど、待っていてくれたのは間違いないだろう。
ありがとう、と言うと。
「や、それはこっちの台詞」
「……どうして?」