基準値きみのキングダム


𓐍
𓈒




ほんとうはもっと早く家を出てくるはずだったのだけれど、デートに着ていく服はこれでいいのかとか、やっぱりこっちの方がいいんじゃないか、とか迷いに迷った結果、待ち合わせ場所にたどり着いたのは、約束の5分前だった。




「杏奈、こっち」




その声に顔を上げると、深見くんがひらひらと手を振っている。

もう、着いてたんだ。




「待った?」

「んーん」



ゆるく首を横にふっているけれど、待っていてくれたのは間違いないだろう。

ありがとう、と言うと。



「や、それはこっちの台詞」

「……どうして?」




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