基準値きみのキングダム
「そろそろ、帰るか」
帰るにはちょうどの時間。
奈央は遅くなってもいいと言ってくれたけれど、やっぱり心配だし、帰らなきゃ。
……でも。
離れるには、まだ、名残惜しくて。
一瞬迷ったけれど、深見くんなら、と素直に言葉にしてみる。
「深見くんは、もう、帰らないと駄目?」
「……っ、いや」
「だったら、私の家で、ごはん食べて行ってほしい」
きゅ、と繋がった手を握ると深見くんは「……かわい」と何か呟いて、それからこくりと首を縦に振った。
「そしたら、スーパー寄ってもいい?」
「おー。買い溜めとくものあったらそれもまとめて買っとこ。せっかく俺、荷物要員だし」