基準値きみのキングダム
この前安くて多めに買っておいたひき肉がまだ冷蔵庫に残っているから、今日の夕飯は餃子にしよう。
スーパーに入ると、ちょうどキャベツがタイムセールで安くなっていた。
深見くんが一緒だったおかげで、ひとり2玉までのキャベツが4玉ゲットできて、ほくほくする。
いい買い物ができた、とスーパーから我が家までの帰り道、るんるんで歩いていると、深見くんが笑う。
「はは、上機嫌」
「だって、見たっ? こんな状態よくて大きいキャベツが、あの値段だよっ、しかも4玉……!」
思わず目が輝く。
そんな私に深見くんはなぜか神妙な顔をしたから、首を傾げると。
「いや。すげーいい笑顔するから、妬けるな、と思って」
「…………それは、キャベツに?」
「そう」
大真面目に頷いた深見くんに可笑しくなって、ひと呼吸おいて、ふたりで吹き出した。