基準値きみのキングダム
うーん、と考えて、あ、と思いあたる。
もしかして、女の子なら誰でもいい、とか。
深見くん、本命をつくらないのは、そーとー遊んでるから……ってうわさもあるし。
優しく送るふりして、家に上がりこんであわよくば────ってひとのことを “送りオオカミ” って言うんだと、この前、誰かが言ってた。深見くんも、送りオオカミなのかも……。
疑いの目を深見くんに向けると。
なぜかそのタイミングでぱちり、目が合ってしまう。
「森下?」
「え、あ……」
不自然にどもってしまって、深見くんが眉をひそめる。
それで、焦った私は疑問をそのままぶつけてしまった。
「なんで……、こういうこと、するの」
「こういうこと?」
「荷物、持ってくれたり……家まで送ってくれたり」
「え。それ、理由いる?」
「……だって、深見くんにメリットとか、ない……」
「メリット? そういうの考えたことなかった」
飄々とした顔で答える深見くん。
「じゃあ……、同じように困ってたら、誰にでも同じこと、するってこと?」
問い返すと、深見くんは「んー」と少し考える素振りを見せる。
それから。
「や、俺、そんなできた人間じゃねえわ。ふつうに、もうちょっと打算的」
「ださんてき……?」
「森下だったから、手貸したくなったんじゃねーのって話」