基準値きみのキングダム
びっくりしてしどろもどろになる私に、深見くんはさらなる爆弾を投げる。
「昨日はありがとな。飯、美味かった」
「な……っ、何言って……!」
ほら、ざわざわしてる。
深見くんが変なこと言うから、きらきらの輪っかが、一斉に私の方を向いた。
「深見と森下に接点なんてあったっけ?」という疑問が、みんなの表情に張りついている。
みんなが私に向ける視線は、好奇と、それから……値踏みだ。
深見くんにふさわしいか、ふさわしくないか見定めるような────私にはその視線が痛くてたまらない。
誰も何も言わないけれど『身のほど知らず』と言われているような気がしてならない。
そろり、そろりと無意識のうちに後ずさりする。
すぐに耐えきれなくなって。
「……っ、な、何でもないので……!」
まったく脈絡のない、訳のわからないことを言い残して、ダッシュで教室のうしろの扉から飛び出した。