基準値きみのキングダム


お腹がまんまるになるまでホットケーキを頬張った京香は、満腹になったら、わかりやすく眠たそうに目をこすりはじめた。


今にも夢のなかにもぐってしまいそうな、とろんとした京香の眼差しに私と奈央がほとんど同時に気づいて立ち上がる。




「京香は俺に任せて。寝かせてくる」

「え、でも」

「俺とふたりにされるより、恭介くんは姉ちゃんがいたほうがいいじゃん」

「どうして」

「どーしてって、クラスメイトなんでしょ。それなりに話すことあるんじゃないの」



ほら京香行くよって、奈央が京香を抱き上げる。


京香が軽いのか奈央に力がついてきたのか、危なげない足どりで居間からすたすたと出て行ってしまった。


その場に残された、深見くんと私。


さっきまでのにぎやかさがまぼろしかのように、しんと静まり返る。




「……ふ、かみくん」

「んー?」

「……今日、席替えだったね」




必死で頭を回して、なんとか絞り出した話題がこの始末。


ああ、もう、奈央のばか。
ばかばか。


クラスメイトだからって、盛り上がれる共通の話題が簡単に見つかるわけじゃないのに……!




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