基準値きみのキングダム
苦しまぎれに沈黙を破った私に、深見くんは目を丸くして、それから大きく肩を震わせた。
「ふはっ、なんだそれ、急にぎこちなさすぎだろ」
「……う」
困って眉を寄せると、深見くんはまた声を上げて笑った。
笑うと、深見くんは、目がきゅーっと細くなる。
「俺、くじ運悪いんだよなー。生まれつきでさ、これ、かなり困ってる」
「え?」
「一番前のど真ん中引き当てて絶望したわ。つーか、初めてでもないし、そろそろ勘弁してほしいとこ」
席替えの話、続いてた。
苦しまぎれの話題だったのに、乗ってくれるんだ。
「そういえば、森下は椋の隣だったよな」
「うん」
「あいつ、よく喋るから。離れたとこからでも、森下となんか話してんなーってちょっと聞こえてた」
頬杖をついた深見くんが、じっと私を見つめる。
それから、こてんと首を傾げて。
「あのとき、椋と何話してたの?」