基準値きみのキングダム
「そう。……や、それこそ合コンとかで出逢ってさ、なんとなくの軽い付き合いからはじまるような、そういう関係もあるんだってわかってるけど。そういうのもありなんだろーけど、俺にはぴんと来ないっつうか」
あいつらと遊ぶのはそれなりに楽しーんだけどね、と深見くんは呟く。
その横顔に、私はこくりと息を呑んだ。
特定の彼女をつくらないのは本命の女の子がいるからとか、はたまた遊び人だからとか────好き勝手なうわさに、尾ひれがついて、女の子たちのなかでは近衛くんたちとひっくるめて、軽いイメージがついている深見くん。
私にとっては掴みどころのないミステリーで、ふわふわした存在だった深見くん。
だけど。
「笑わないんだ」
「今の笑うところだったの?」
「ばかにされてもおかしくないかなって」
「なんで? しないよ、普通」
ふわふわした存在の深見くんの、ほんとうの心に触れたような気がした。
深見くんって、知れば知るほど、印象が変わっていく。
ホログラムみたい。
見る角度によって色が変わるのに、そのどれもが、きらきらしていて。