基準値きみのキングダム
繊細で、ピュアな一面を知った。
掴みどころのなかった深見くんの輪郭をまたひとつなぞって、またひとつ。
「素敵だなって、思ったけど」
「ふ、森下ってほんとさ────……いや」
「?」
「いや。……ちょっと、ぐっときただけ」
噛みしめるように目を伏せて、それから深見くんは、突然。
「森下は?」
「へっ?」
なんのことか全くわからない。
きょとんとした私に、深見くんはずいと詰め寄った。
「今、好きなやつ、いる?」
「え。……えと」
「あー、やっぱナシ。言わなくていい」
聞いておきながら遮られて、戸惑う。
深見くんはあっさり質問を変えた。
「今まで誰かと付き合ったことある?」