基準値きみのキングダム
なんでそんなこと、聞くんだろう。
不思議に思う。
だって別に深見くんだって知りたいわけじゃないはず。
まあ隠す必要もないか、わかりきっていることだし、と首を横に振った。
「ないよ」
「ふうん?」
あれ、深見くんの声のトーンがちょっと明るくなった。
機嫌が良くなったように見えるのは、気のせい?
「興味ねえの? そういうの」
「興味があるとかないとか、それ以前の問題だし……」
こんなかわいくない女の子、誰だっていやだよ。
誰も、私のことなんて、好きにならない。
恋なんて、私には憧れているくらいがちょうどいいの。
憧れの恋は、まさに深見くんが語ったような恋だけど。
理想が同じで、びっくりしたくらいだけれど。
……私にとっては夢にも遠い、夢物語だから。
だからせめて、深見くんは、そんなおとぎ話のような恋ができるといいなとひそかに願う。私の分まで、なんて言ったらおかしいけど。
────叶うだろうな、深見くんなら。