基準値きみのキングダム
お人形さんみたいで、誰の目に映っても、正真正銘の “かわいい” 。
女の子が欲しがるもの────私が欲しいと思うものを全部持っている、まさに “かわいい女の子” の権化だなって、同じクラスにいた去年1年間ずっと思っていた。
ふとしたときに、つい眺めてしまっていたくらい。
それくらい、上林さんは私とは正反対のところにいる女の子。
そして私はそんな彼女に一方的に憧れていただけ。
元クラスメイトとはいえ、実際に関わることなんて、ほとんどなかった。
なにしろ、正反対だから。
ましてや、こんな風に名指しで呼び止められることなんて、1度もなくて……。
「森下さんって、なんなの?」
ローズピンクのグロスが丁寧に塗られた、うるうるの小さな唇が目の前で動く。
思わず見惚れてしまって、反応に遅れた。
「……はい?」
「恭介くんの、なんなの?」
腕を組んで、私をキッと見つめる。
その強い眼差しですら、かわいい。
いいなぁ、と油断するとうっかり口に出してしまいそう。
それにしても『なんなの?』って、唐突だな。
「クラスメイト、だけど」