売れ残りですが結婚してください
誕生日を祝うはずなのに翠と育の娘の玲ちゃん以外の4人が神妙な面持ちで食事をしていることに翠は戸惑った。

もしかして自分の帰りが遅くなってみんなが不機嫌になったんじゃないかと思ったからだ。

「ねえ」

翠が声をかけるとみんなが一斉に翠を見る。

その表情が固すぎて翠までも強張ってしまう。

「ねえ、みんなどうしたの?なんか今日変だよ」

母の作る料理もこんな雰囲気じゃあ美味しくないと翠は箸を置こうとした。

すると今まで黙っていた忠明が翠に声を掛ける。

「翠、実は大事な話が……あるんだ」

「大事な話?」

周りを見るとみんなの硬い表情に、翠は自分以外はもうそのことを知っているのだと感じた。

娘に対してこんなに顔を強張らせる父を見たことがなかった翠は、かなり深刻な話なんだと思い姿勢を正した。

そして意を決した忠明は深呼吸をすると翠の目を見つめてこういった。

「翠、お前に許嫁がいる」

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