売れ残りですが結婚してください
許嫁言葉は知っている。双方の両親が子供の結婚の約束をすること。

漫画やドラマでよく耳にする言葉。

自分の意思とは関係なく結婚する相手が決まっているというのは、小さい時に夢はお嫁さんになることって言っていた石神にはちょっと夢とロマンを感じた。

だが、それは相手が王子様みたいにかっこいい人にだけ限定したもの。

現実はそんな都合のいいことなど無いに等しい。

とはいえ全くない問いわけでもないが、余程の金持ちか家柄の良い人。

自分たちには縁遠いものだと思っていたのにまさか身近にいたとは信じがたかった。

だが翠から事の経緯を聞いてさらに驚いた。

「なんか現実離れした話だね。でも翠ちゃんはそれでいいの?だって会ったこともない人よ。やっぱり結婚は好きな人とするべきだと思うけど……」

小さい時の夢というのは儚いもので石神も歳を重ねる中でこの世に王子様などいないことを知り、平凡でも幸せだと感じる男性と結婚するのが一番だと学んだからこその発言。

「……そうですよね。でも私、誰かを好きになったことがないんです。だから結婚も恋愛も正直よくわからなくて……結婚したら先輩みたいにそういうのがわかるのかな?」

「う〜ん、人それぞれというか……」

石神は頭を抱えてしまった。
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