売れ残りですが結婚してください
それから2日が経った。

翠は寄り道もせずまっすぐ帰宅すると、何やらリビングが騒がしい。

玄関には父と母の靴しかないところを見ると、大方夫婦喧嘩だろう。

翠の両親は些細なことでよく喧嘩になる。

ただ、元々仲の良い2人。

喧嘩してもすぐに仲直りするので翠はあまり気にならない。

「ただいま」

翠がリビングに顔を出すと両親がパッと翠を見た。

「お、お帰りなさい」

母の慌てる様子に翠は違和感を感じた。

「着替えてくる」

翠がつぶやく様にいうと母の冴子がせかす様に忠明を呼ぶ。

「わっかった。わかったって」

忠明は渋々といった様子で重い腰をあげる。

「翠、着替える前に話があるから座りなさい」

「はい」

言われるがまま翠はソファに座った。

「実は、翠に大事なことを一つ言い忘れていてな……」

「はい」

翠はそれが許嫁の件だと察した。
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