売れ残りですが結婚してください
そこに書かれていたのはやはり富子への別れの言葉だった。

『この手紙を読んでいるということは、もう自分はこの世にいないと言うこと。だけど自分は悔やんではいません。富子さんと出会えたこと、そして短い時間でしたが人を愛する喜びを知ることができた。でもただ一つあなたにお願いがある。僕たちが叶えられなかった夢を次の世代に託してほしい。いつかあなたの血を引く誰かと僕の血をひく誰かが一緒になることを』

その後富子は同じ華族である共通の友人だった長尾と結婚した。

長尾は純一郎からもし、自分に何かあった時は富子のことを頼むと言われていたからだ。

結婚後、２人の間に子供が３人生まれた。３人とも男の子だった。

純一郎の遺言となったこの手紙を富子は死ぬまで大事に持っていた。

そして富子はその３人の息子に純一郎との願いを託した。

その願いは啓介を介し古川家に伝えられた。

富子の死後、なんとか願いを叶えようとしたのだが、残念ながら古川家も男ばかり。

せめて富子も孫に男の子がいたら……そう願っていたのだが孫の代まで男。

だから互いに諦めていた。
< 3 / 87 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop