売れ残りですが結婚してください
メールの着信音が鳴った。

翠はバッグからスマートフォンを取り出した。

するとあのシュウという男性からだった。

《待ち合わせは初めて一緒に行ったカフェにしよう。時間は１１時。会えるの楽しみにしてます》

あと２日で展覧会に行けると思うと翠はワクワクしていた。

もちろん、翠の目的は展覧会を見に行くことであって、一緒に行くシュウのことは連れてってくれる人という感覚しかなかった。



そして展覧会に行く当日。

この日、翠の妹の育が娘を連れてやってきた。

決して遊びにきたわけではない。

「母さん、いつもごめんね」

育が母に手を合わせる。

「いいけど今回は何日よ」

「明後日の朝迎えにきます」

育は漫画家だ。月刊誌の連載が好評らしいのだが締め切りが近くなると娘の玲を実家に両親に見てもらっているのだ。

「ねーねーおばあちゃん。今日は翠ちゃんいるの？」

育の娘の玲が冴子に尋ねる。

「翠ちゃんいるけど……今日はお出かけするの。だから今日はおばあちゃんでいい？」

玲は翠が大好きだ。

「へ〜翠ちゃん出かけるんだ。珍しい〜」

育は２階を見上げた。
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