売れ残りですが結婚してください
「お友達と展覧会に行くそうよ」

「へ〜そうなんだ。でも今のうちに好きなことしといた方がいいかもね」

すると2階から翠が勢いよく駆け下りてきた。

「あれ?育来てたんだ。もしかして締め切り前?」

「……うん」

育は2階から降りてきた翠の服装に違和感を感じた。

育は3姉妹の中でも一番勘がいいというか、鋭い。

その性格が漫画家としてとても活かされている。

時には本人も気づかないことに気づいたりするのだ。

「ねえ翠ちゃん、ちょっといい?」

手招きをし外へ出た。

翠は母や玲に「行ってきます」と行って外へ出た。

「どうしたの育」

育は翠をじーっと観察するようにまじまじと見た。

「育ちゃん本当は展覧会じゃなくてデートでしょ」

疑問形ではないとこが育らしい。

「え?展覧会に行くけど」

育はハッとした。

(そうだ、翠ちゃんて超がつくほどの鈍感だった)

そこで質問を変えてみた。

「その展覧会、誰と行くの?」

「……知り合い?」

(むむむ、やっぱりおかしい)

育はそれが男の人だと直感した。
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