売れ残りですが結婚してください
と言うのも普段は相手の名前を言うからだ。

もちろん、育は名前を聞かれても顔が浮かぶわけではない。

だけど、会話の中で度々出てくるうちに名前を言われてもなんとなくわかるそうになっていた。もちろんその全ては女性だった。

だが今日は違った。決定的なのはやはりその服装だ。

普段、動きやすい服装を好む翠が今日はワンピースを着ている。

「一緒に行く人男の人なんでしょ」

育の言葉に翠はドキッとした。

(なんでわかっちゃったの?)

翠の心の声は表情さえ見ればすぐにわかる。

「いつも名前を言うのに今日は言わなかったのもあるけど、そのワンピースが答えだよ」

育の名推理に翠は驚くばかりだった。

「えええ?でもこれは石神さんがチョイスなんだけど」

翠の会話に高い頻度で登場する石神のことを育はよく知っていた。

もちろん会ったことはないが、翠を可愛がってくれる先輩の一人だということは会話の節々で感じるいた。

その石神さんが知っていると言うことはやはり何かあるってことだと育は感じ取ったのだ。
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