売れ残りですが結婚してください
「すごく可愛い。これなら彼もどきっとしちゃう」
石神が目を細めた。
「え?彼って?」
「あっ……彼って……光琳よ。きっと天から翠ちゃんの姿を見て『わしのためにありがとう』って思うわよ」
かなり無理があるが、今の翠にデートを匂わすようなことを言ってはいけないと石神は思ったのだ。

そんな説明を受けた育だが勘が鋭いのでなんとなく話が見えてきた。

「翠ちゃん」

「何?」

「似合ってる」

「ありがとう」

「思いっきり楽しんできてね」

「うん。じゃあ行ってきます」

手を振る翠を見て育は複雑な気持ちになった。

今から会うのは男だ。

翠にはまだ見ぬ許嫁がいる。その人と結婚することを本人は了承している。

翠のことだから今日デートする人とどうこうなりたいなんて今は全く思ってないだろうけど……。

もし……もしものことがあったらどうなるんだろう。

育は自分の勘が当たらなきゃいいけどと思うのだった。
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