売れ残りですが結婚してください
待ち合わせのカフェへに着いたのは約束の時間より10分早い時間だった。

翠のカバンの中には常に文庫本が入っているので、時間まで本を読もうと思いながらカフェの中に入る。

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

女性スタッフに声をかけられた翠は「2名です。人と待ち合わせしています」とピンと姿勢を正し、真面目な表情で答えた。

その姿に女性スタッフは戸惑いながらメニュー表を手空いている席に案内する。

翠はその後ろについ行くのだが「翠さ〜ん」と男性が翠を呼んだ。

声のする方に視線を向けるとシュウが中腰で手を振っていた。

「あっ!すみません。あの方と待ち合わせしてました」

真顔で答える翠に女性スタッフはシュウと翠のギャップに驚きを隠せない様子で「は、はいわかりました」というと、再度確認する様に翠とシュウを見てから軽く会釈をした。

翠はシュウの座っている席の前まで来ると軽く会釈をした。

「随分とお早いのですね」

自分の方が絶対早いと思っていた翠は少し焦った。

「いや、僕は今来たところ。でも君も早いね」

ニコッと微笑むシュウの笑顔にドキッとしたものの、視線だけを斜め下に向ける。

「人を待たせるのはあまり好きじゃないんで」

真顔で答えた。

だがシュウは笑顔を崩さなない。

「僕も同じ。それより座ったら?」

「はい」

翠はシュウに促され向い側の席に座った別の女性スタッフがシュウの頼んだコーヒーと一緒に翠のお水を持ってきたのだが、シュウと翠のギャップに驚いた様子だった。

「ご注文はお決まりですか?」

「アメリカンで」

翠はメニューも見ずに注文をした。

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