売れ残りですが結婚してください
「ごめん。お待たせ」

シュウが爽やかな笑顔で運転席に乗り込んだ。

「い、いえ」

慌ててシートベルトを装着すると翠は緊張の面持ちで姿勢を正す。

するとまたもシュウが笑い出した。今度は何?と思いながら姿勢を崩さず顔だけをシュウに向ける。

「ごめんごめん。なんか博物館にいる監視員さんみたいに姿勢が良すぎるから」

「え?」

言われてハッとする。

監視員というのは美術館や博物館の展示室の角で座っている人のことだ。

「少し距離があるからもっとリラックスしていいからね」

「は、はい」

返事をしたものの、初めてだらけの翠にはリラックスする方が難しかった。

そして車は高速道路に入り約1時間で目的地である美術館に到着した。

実は車に乗っている間、翠は不安だった。

本当に展覧会に連れてってくれるのだろうかと……。

そう考えるのも仕方がない。

翠にとって男性と車に乗って出かけることは人生初の出来事なのだから。

だが目的地に着いた途端、翠の目は今までにないほどキラキラしていた。

それがあからさますぎてシュウは口を押さえながら笑いを堪えていた。

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