売れ残りですが結婚してください
「シュウって僕を呼んで。それが僕へのお礼」

なんて欲のない人なのだろうと翠は思った。だけど面と向かって名前を呼ぶのは意外と難しい。

特に呼び捨てとなると相当親しくなきゃ言えない。

出会って２回目は翠にとって高いハードルだった。

それでも翠は勇気を出して名前を呼んだ。

「シュウ」

だが自分でもわかるぐらいぎこちなかった。

「もう１回。そうだな〜友達や家族を呼ぶように言ってみて」

翠は姉の唯と妹の育を思い出す。

この２人を呼ぶように言えばいいのかもしれない。

そう思えば簡単だった。

「……シュウ」

翠がシュウの名を呼んだ。

するとシュウの顔がほんのり赤くなっているのがわかった。

「どうしました？顔が赤いですよ」

シュウが翠に呼ばれたことで顔を赤らめていることなど全くわかっていなかった。

恐るべし恋愛経験ゼロ。

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