売れ残りですが結婚してください
5
翠は唯の部屋で写真を見ていた。

小さな頃のものから最近撮ったものまでの写真が順番に並べられていた。

「これ全部ってわけにはいかなくて、どれにしようかすごく迷ってるのよね。翠はどれがいいと思う?」

翠は真剣な表情で唯の選んだ写真を見ていた。

「この写真かわいい」

ゆいが指差したのは唯の小さな時の写真だった。

満面の笑みを浮かべた顔は本当に愛らしい。

「本当?でも私はこの写真がいいけどな〜」

そういって唯が指差したのは唯、翠、育の三人がピンクのドレスを着ている写真だった。

唯が言うには誰かの結婚式に出た時の写真だが、誰の結婚式かは覚えていないそうだ。

「全然覚えてない」

「そうよね。でもこの時の翠ってすごくモテモテだったんだから。ほら見てよ。とびきりかわいいんだもん」

唯は愛おしそうな目で写真を見ている。

だが翠はそれでも全く思い出せない。

「すごくかわいい男の子がいてね、翠にべったりくっついて離れようとしなかったの。『翠ちゃんと結婚したいーって』言ってね。でもその男の子が誰だったのか忘れちゃったけどね」

「そうなんだ」

「そうよ〜。ところで何があったの?」

唯は写真を見ながら翠に尋ねた。

「え?」

「思いつめた顔してたじゃない。何か嫌なことでもあった?」

唯は誰よりも翠のことを気にかけてくれる姉だった。

だから翠のどんな小さな変化にも気が付いた。

「唯姉の初恋っていつ?」
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