売れ残りですが結婚してください

「おはよう」

「あら、今日はお休みなのに早いじゃない」

母の冴子は朝食の準備をしていた。

「これ持ってくよ」

翠は焼き上がった魚をテーブルに置き、冷蔵庫から納豆と漬物を取り出す。

実は翠は1時間以上前から起きていた。

シュウとドライブに行くことになり朝から落ち着きがなくそわそわしていた。

そんな様子を冴子は見逃さなかった。

「どうしたの?なんか今日変よ」

「そ、そうかな?あっ……今日ちょっと出かけるからお昼ご飯いらない」

「あらそうなの?でも最近休みになるとよく外出するようになったわね」

冴子の鋭い指摘に翠は戸惑った。

「そうかな?」

すると冴子は振り返った。

「そうよ〜。最近休みの度に出かけてるじゃない。お姉ちゃんの後に結婚するからって呑気の構えてると大変なんだからね」

それはきっと先日ドレスのことを言っているのだろう。

「わかってる。でも当人同士が顔合わせもしないのにどうやって式場を選んだり打ち合わせするの?」

それは結婚が決まった頃から疑問に思っていたことだった。

「それなんだけど、式場は古川家が決めるそうよ。でも招待客数のバランスが問題よ。あちらは大企業だものね〜。とりあえずは私と秀嗣さんのお母様とで色々と相談しつつ、翠や秀嗣さんの希望を取り入れて決めるから面倒なのよ〜」

「……そうなんだ」

聞いているだけで頭が痛くなりそうな話なのに、まだ自分のこととはおもえない翠だった。
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