売れ残りですが結婚してください
忠明が次女の翠に許嫁の話をしたのはそれから1週間後のことだった。

この日は忠明の誕生日でみんなが揃う日。

万が一翠が嫌だと言った時のための援護が欲しかったのだ。

もちろん、必ず援護してくれるなんて確約などない。

ほぼ、援護してくれるだろうという願望に過ぎなかった。

翠に許嫁がいることなど知る由も無い3姉妹は父のためにとお金を出し合ってマッサージ機をプレゼントすることにしていた。

買ってくるのは次女の翠。

仕事が長引いて少し遅くなると連絡が入ったのは、長女の唯と育がちょうど実家に着いた頃だった。

「お母さん、翠が少し遅くなるって」

玄関でメールを確認した唯が靴を脱ぎながら母に告げる。

するとそれを聞いた忠明がリビングから顔を出した。

「遅くなるのか?」

どこかホッとしたような表情に唯は違和感を感じた。

「遅くなるのがいいみたいな言い方じゃない?」

「そ、そうかな?」

明らかに挙動不審だ。

「もしかして翠と喧嘩でもしたの?」

放り投げるようにバッグをソファに置くと、どかっと座り長く綺麗な足を組んだ。
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