求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
ブランデーの水割りを口にした後、「そういえば」と記憶を辿りつつ言う。

「今日、病院で高木さんに会ったんです」

「高木君に?」

「『俺に会ったこと話すなよ』って言われたんですけど……」

確かに言われたが、承知したとは答えてない。
高木さんには申し訳ないが、話したがりの女の口を止めるのは非常に困難だ。

「大学病院になんの用で来たのか、気になっちゃったわけだね」

上原課長は私の胸の内を察し、伝えたいことを先回りに口にしてくれる。

「はい。なんか……高木さん。顔が暗くて、どうしたのかなって」

「ありがとう教えてくれて。高木君のことは気になってたんだ」

このところの営業部は、部内の空気が非常に悪い。

それは、高木さんが凡ミスをすることが多くなり、坪井係長を始めとする事務側の社員達の反感を買っているからだ。

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