求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
いまの私は強面な彼を退かせるほど、すごい形相なんだろう。でも、気にしない。

背の高い彼を下から睨むよう、まっすぐ見据える。

「だったら、もっと頼ってください。体力だけは自信あるんです!」

シンッと沈黙が降りる。ややして、コホンッと遠慮がちな咳が漏れた。坪井係長だ。

「私も高木さんの書類を優先的に処理します。山瀬君を後回しにしてでも。構いませんね?」

坪井係長がキラリと眼鏡の奥で目を光らせる。
彼女に一瞥された山瀬君が、へへっと鼻をくすりながら言う。

「いいっすよ。彼女とのデートに遅れたって、愛し合ってるから問題ないし!」

しょげかえった彼も調子が出てきたようだ。軽口に付き合ってやろうじゃないの。

「そんなに余裕ぶって大丈夫ー? 愛想つかされちゃうんじゃない?」

「中野さんは、早く彼氏作ってくださいね! 坪井係長も」

< 127 / 165 >

この作品をシェア

pagetop