求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
それでも不満を漏らす社員がいなかったことを、部長は誇らしげに言いふらした。

『うちの連中は性格がいいのが揃ってんだよ。なんでかって? いい奴って思ったら、バカでも採用するからな、俺!』

会議室の壁はただでさえ薄い。
部長会議で豪快に笑う彼の声は、廊下までだだ漏れなのだ。

筆記試験がお粗末な出来だろうと思ったのに、私が採用されたのはそういうわけか。

外回りから戻った際、聞こえてきた声に思わず吹き出した。

部下をバカ呼ばわりはどうかと思うが、部長独自の採用基準はありなのかもしれない。
時々ぶつかり合うこともあるが、いい職場だなぁと思う。

私が前にいた課長とやり合ったのも、大切な職場を守りたかったからだ。

部下を取りまとめる大事な仕事を、上原課長に丸投げな部長は、ゴルフ三昧……いや、客先との接待に、とても忙しい。
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