求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
そのせいか、紙ナプキンで口元を拭う彼がバツ悪そうに言う。

「俺、すげぇ負けず嫌いなんだよ。敵わないって思った奴とは友達になれない」

それって、高木さんに認められてるってこと?

思いがけない言葉を貰い、目が見開く。

「前の課長、すげぇ嫌な奴だったろ。我慢ならねぇって思ったけど、転職したばっかで口出し出来なかった。

そしたらお前があんなことして、完敗だわってなったんだよなぁ」

高木さんが苦笑しつつ、肩を竦める。
それだけで、灯りがともったように胸が温かくなった。

「港電気の担当が変わるってなった時、中野さんにしてほしいって上原課長に頼んだんだ。

お前なら山田さんも気に入ってくれるって思ったし」

港電気の担当替えの時、そんなやり取りがあったとは知らなかった。

綻びそうになる頬に手を添え、嬉しさを噛み締めると、高木さんが懐かしむように言う。

「山田さん。すげぇー釣り好きなんだよなぁ」
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