求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
ふたりきりの温泉旅行で
私と上原課長が付き合うようになり、二度目の秋が来た。
私達の関係は良好だ。ひとつの問題を除いては。
半年前、私が仙台支社の企画部に異動になり、遠距離恋愛になってしまった。
毎日顔を合わせていたのに、週に一度会えたら多いくらいの頻度でしか会えなくなった。
私は遠距離恋愛で一度失敗している。
だから『席が空いたぞ』と企画部の部長に誘われた時に、どうするかすごく悩んだ。
最終的に異動を決断したのは『行かないと後悔するんじゃない?』と上原課長が背中を押してくれたから。
付き合って一年と少し経つが、彼はいつも私のことを一番に考えてくれる。
私には勿体ないほど、出来過ぎた彼氏だ。
紅葉が楽しめる国民の休日。
高台から海を一望できる高級旅館に、彼とふたりで泊まりに来ていた。
今日は三連休の二日目だ。明日の午前中には、旅館をチェックアウトしなければならない。
海に沈む夕日を眺めながら、部屋で夕食の海鮮料理を堪能する。
食事が引上げられた後、上原課長に手を引かれるまま、窓辺のウッドデッキまで連れて行かれる。
ガラス戸を隔ててあるのは、湯気を立ち昇らせた檜造りの露天風呂だ。