求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
外を歩く時に触れる手、唇にくれるキス、重ねる肌もすべて……。

だから私も自分を大切にしようと思った。
彼が触れる髪を艶やかにして、長く触れられるように背中まで伸ばした。

そうして身体と心を磨いたら、以前より自分が好きになれた気がする。

『恋をすると、女は綺麗になる』

これほどぴったりとハマる表現はないだろう。愛されている自信。そして居場所があるという安心感。

心に余裕があると女はいくらだって輝ける。

遠距離恋愛になっても彼との関係は何も問題ない。

ただでさえ会う時間が少ないのだから、無駄な話はしたくはない。恋人が男に口説かれたと聞いて喜ぶわけがないのだから。

疑いの目を向けられ、私はどうにか話題を変えようと試みる。

「ねぇ、身体が冷えちゃう……」

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