求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
キスを自分からすることも滅多にない。

女友達に話したら『アラサー世代のくせに何を言ってんだ』って呆れられそうだが、照れくさくて出来ないのだから仕方がない。

こんなの迫ったうちに入らないだろう。だが、上原課長には効果があったようだ。


「美月。おいで……」

身体を少し横向きにした彼に足の間に来るよう促される。

霧がかる湯気に包まれた浴槽の周りには、仄かなダウンライトが四隅にあるだけ。
湯の中は目を凝らさないと見えないが、視線を上向きにしつつ彼の言う通りにする。

背中を固い胸板に預けるよう座ると、後ろからゆるく抱き締められた。うなじに口づけをくれながら彼が囁く。

「好きだよ……」

ほどよく温まった身体を密着させながら、唇を食まれて熱い口づけを交わしていく。
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