求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
そこまではいつもと同じ。だが、肌を滑らすような手つきに違和感を覚えた。

私を知り尽くした指先が性急に高みに昇らせようとしている気がしてまずいと思った。

「はっ……あ、駄目っ……」

淡い吐息混じりに訴えるのに彼はやめない。

本当っ、どうしちゃったの……。

しなやかな指と肌を伝う唇に快楽を余すところなく注がれる。
悩ましい吐息を必死に堪えて息がきれぎれになった頃、ようやく身体が解放された。

だが息をつく間もなく、室内に場所を変えて激しく求められた。

彼は常に紳士だ。身体を重ねる時でさえ独りよがりにならず、私の反応を窺いながら果てようとしてくれる。

でも今日の彼はどこかおかしい。
暴走とまではいかないが、やり場のない感情をぶつけるように激しく抱かれる。
そして求められる最中、何度名前を呼ばれた。

「美月っ……」


上原課長っ、どうしたの……。
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