求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
約束をすっぽかすなんて最低だ。
だから嫌われる。嫌われた、大好きな人に……。
不意に瞼の奥が熱くなり、足を速める。
気がつけば、駅へ向かう人の群れを縫うように走っていた。

心臓が痛くなるほど、周りを振り向かせるくらいに速く……。

何がいけなかったんだろう。どこで間違えたんだろう。分からない。

悪いとこがあるなら教えてくれたらいいのに。いくらだって変えたのに。そうしたら、こんなことにはっ……。

息を切らすほど走りながら上原課長を責めたくなる。

責めたって仕方ない。人の心は変わる。変わらない人なんていないんだから――。


彼への想いを吹っ切るように気がつけば隣の駅前まで走って来ていた。
やたらと人が多いのは金曜の夜だからだろうか。

疑問が浮かんだが、すぐにそれがイベント目的に集まった群衆だと分かる。


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