求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
凜ちゃん。最終回を楽しめたかな……。

東京から離れてなかなか会えないが、凜ちゃんとは時々手紙のやり取りをしている。
ママの体調もすっかり良くなり、家族三人で北海道旅行に行ったと、平仮名だらけの絵葉書が最近届いた。

時間を巻き戻すよう、三人で暮らした日々が脳裏に蘇る。

折り紙を教えた。オムライスを作った。
少し硬い、でも温かな膝の上で私は……。

意識より先にドクンッと鼓動が反応する。熱くなった瞼の裏に蘇る、鮮明に。
胸を温めてくれた笑顔が、瞼の裏にくっきりと浮かび上がった。



『好きなだけ、ここにいればいい。ここを、中野さんの居場所にすればいい』

人前で泣いたのは、大人になって初めてだった。

鼻をすすると、上原課長がタオルで優しく鼻を拭ってくれた。
大事な子供にするような仕草が嬉しくて、また泣けた。


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