求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~

私はバカだ。部長に高笑いされても仕方ないほど、大バカだ。

上原課長はなんでもスマートにこなす、大人の男だと思っていた。神のように完璧な人だと……。違った。彼だって私と同じだ。

不安を抱え、悩み。それでも勇気を出して会いに来てくれた。

一旦言葉を止めた彼が、まっすぐ私を見つめる。胸を震わせる言葉が身体の芯まで響いた。

「でも、これが本当の俺だから。それでもよかったら、一生そばにいてほしい」

カッコ悪いと認めつつ素顔を晒した彼は、なんて素敵なんだろう。

こんな人、どこにもいない。どこを探したって絶対に……。

止め処なく零れる涙を、彼は手で拭ってくれる。心までいたわるように優しく。

「もうっ……そんなこと言われたらっ……泣く」

「ごめん」

「謝んっ……ないで。嬉し泣き……だから……」

「それって、OKってことでいい?」

ずずっと豪快に鼻を啜りながら頷く。首が折れそうなほど、何度も。

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