求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
いや、そこ……。笑うところじゃないからね?

「ねぇ、誰?」

「美月は知らない方がいいよ」

「無理。教えて!」

謎を残したままじゃぁ、幸せな結婚生活にだって支障が出るだろう。
胸ぐらを掴む勢いで問うと、彼が困ったように笑い、教えてくれた。

「ありさは、ラランちゃんの本名だよ」

「へっ……。えぇっ――! なんで言うの!?」

それって、明日の最終回のネタバレじゃないか!

自分で聞いたくせに責めるのはあんまりだが、つい声を荒げてしまう。

「だから、知らない方がいいって言ったのに」

上原課長が苦笑しながら、地面に落としたままの傘を拾い上げる。

仙台より放送が早い東京で最終回を見た彼は、夢で私と物語の結末を語り合っていたと、教えてくれた。
寝言で名前を言ったのは、そのせいだろう。

「上原課長……」

雨に濡れた傘をパンッと鳴らした彼に呼びかける。
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