求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
「ここは、私が払いたかったです……」

口まで尖らせたのは、自動会計機にカードを差し込もうとした時。

『中野さん、あれ見て!』と騙された隙に、彼が支払いを済ませてしまったからだ。

「上原課長があんな古典的な手を使うなんて、予想外でした」

「ごめん。でも、ご飯を作って貰うのに、材料費までってわけにはね。あっ……」

彼は視線を宙に投げ、思い出したように言う。

「中野さん。小さい子、苦手だったりする?」

「平気ですよ」

「よかった。姪っ子の(りん)なんだけど、結構人見知りするんだ。気を悪くさせるかも……」

「大丈夫ですよ」

心配げな眼差しを向けられ、私はカラッとした笑みを返す。

そして食材達を買い物袋に詰め終え、待たせていたタクシーにふたりで乗り込んだ。


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