求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
そこには、未就学児と思しき幼児が何人かいて、女性スタッフが凜ちゃんを呼んでくれる。

「凜ちゃーん。お迎えに来てくれたわよ」

彼女の声に反応したのは、ただひとりだけ。

部屋の右隅のソファで本を読む女の子が、嬉々とした瞳で顔を上げる。が、一瞬で顔を強張らせ、再び視線を膝上の本に落とした。

もしかしなくても、上原課長の隣に私がいるからだよね……。よし、それなら!

キョロキョロとキッズルームを見渡し、テーブルで折り紙をする幼児とスタッフに近づく。

「あのっ、何枚か折り紙を貰ってもいいですか?」

「ええ。お好きなのをどうぞ」

スタッフが笑みを湛え、カラフルな折り紙が入った透明なケースを差し出してきた。
折り紙を数枚貰い、空いているテーブルもお借りする。

絨毯敷きの床に正座し、粛々と折り紙を畳んでいく。

「中野さん、何作ってるの?」

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