求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
もちろん、お世辞だろう。
でも、鏡越しから真摯な眼差しを投げられると、どきまぎしてしまう。

今日の上原課長って、なんか調子狂う。早く終わらせちゃおう……。

コンディショナーのポンプをガシガシ押し、手にいっぱい塗りつける。と、足元がつるっと滑り、ズデンッと床に尻餅をついた。

どうやら足元まで液が垂れ流れていたようだ。

「痛ったぁ……」

不意打ちできた激痛に顔を歪めると、「大丈夫!?」と上原課長に顔を覗き込まれる。

ちっ、近い……。

吐息が触れそうなほど、彼と近づいたのは初めて。

端正な顔立ちが間近に迫ると、尻じゃなく心臓がおかしくなりそうだ。

身体が急に火照り出し、スッと視線を床に落とすと、手首をグイッと掴まれた。

「わわっ……」

力強い腕に引かれるよう床から立たされ、勢い余って彼にしながれかかってしまう。

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