求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
程よく温まった肌と密着し、たぎったように全身が熱くなる。

手を引いた彼の左手が私の背にまわり、熱い吐息が耳朶を掠めた。

「気をつけないとダメだよ?」

「すっ、すみません……」

からかうような言い方をされても、軽口すら叩けない。

私の耳はすごく敏感だ。全身のうち、ベストスリーにはいるくらいの。
だから、この体勢は非常にマズイ。

上原課長の息が耳にかかる度、淡い吐息が漏れそうになる。それを唇をギュッと噛み締めることで必死に堪えた。
だというのに、彼はいっそう私を抱き寄せて、

「中野さんってしっかりしてるけど、時々おっちょこちょいだから」

「ぁっ……」

優しげな囁きと共に耳朶を唇が掠め、堪らず吐息を漏らしてしまう。

やだっ、恥ずかしい……。

彼氏じゃない。しかも、会社の上司にあられもない声を聞かれた。
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