求愛一夜~次期社長とふたり暮らししています~
『美月ちゃん。悩みでもあるの? 凜が聞いてあげるよ』と、凜ちゃんに心配されるほど、私は分かりやすく落ち込んでいた。

凜ちゃんに余計な気遣いをさせるわけにはいかない。

必死に平静さを装っていたら、いつしかそれが普通になり、好きだと自覚する前の状態になんとか戻ることが出来た。


そして、照りつける陽光が夏の香りを含ませた七月。

私が上原家に居候して、一カ月半が過ぎようとしていた。

凜ちゃんのママの容体も良くなり、あと少しで退院出来るまでになった。
凜ちゃんのパパは、仕事の調整が出来たようで、間もなく帰国出来そうだという。

上原課長の手も完治した。

凜ちゃんがご両親と暮らせるようになったら、上原家を離れるつもりだ。

あと少しで同居も終わりか。いいタイミングかも……。

好きな人のそばにいられるのは、嬉しい。
でも、この恋は絶対に実らない。


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